SES会社員の年収が上がりにくい構造的な理由と、私が見てきた現実

学びログ

私はSES業界に長く携わってきました。自分自身もプレイヤーとして現場に出ながら、商流の組み立てや単価交渉にも関わっています。

この記事は、SESで働いている方や、これからSESの個人事業主として独立を考えている方に向けて書きました。「なぜSES社員の給料は上がりにくいのか」——その構造的な理由を、自分が見てきた範囲でまとめてみます。

SESの報酬構造:時間単価 × 稼働時間

まず、SESの基本的な仕組みを整理します。

SESの売上は「時間単価 × 稼働時間」で決まります。月間の稼働時間に下限・上限の幅を設ける「精算幅」の契約が一般的です。

この計算方法、冷静に見るとアルバイトの時給計算と本質的に同じなんですよね。高度なスキルを持っていても、報酬の算出ロジックは「時間で精算」。経営側で単価交渉をしていても、この構造の中では動かせる幅に限界があると感じます。

多段階構造:お金はどこで減っているのか

SES業界の特徴は、元請け → 一次請け → 二次請け → 三次請け…と商流が多段階になることです。

私自身、商流の中間に立つこともあれば、協力会社と一緒にチームを組んで上流に入ることもあります。商流のどの位置に入るかで取り分が大きく変わる。これは日々実感していることです。

そして各段階で確実に粗利が抜かれる。これは悪意ではなく、各社がビジネスとして存続するための当然のコストです。

モデルケース:三次請けの場合

具体的な数字で見てみましょう。

  • クライアントが月額120万円で発注
  • 各段階の会社が20%の粗利を確保

120万円 → 96万円(一次請け後)→ 76.8万円(二次請け後)→ 61.4万円(三次請けの売上)

三次請けの会社に入る61.4万円から、社会保険料・福利厚生費・管理コスト・営業経費を引くと、社員の手取りは23万円前後になります。

この数字を見て「ピッタリだ…」と感じた方もいるかもしれません。単価交渉に関わる立場から見ると、この計算はかなりリアルです。会社が「搾取している」のではなく、多段階構造の中で構造的にそうなるのです。

この構造の中でエンジニアにできるだけ還元しようとすると、間に入る会社の取り分はかなり薄くなります。

スキルが上がっても給料が上がりにくい理由

もう一つ、業界にいて感じることがあります。

エンジニアのスキルが上がっても、それが直接的に単価交渉に反映されるまでにはタイムラグがあります。契約更新のタイミングでしか単価は見直せないし、クライアント側の予算枠もある。成長の実感と報酬が追いついてくるタイミングにはズレがあるんですよね。

加えて、SESの現場ではクライアントの指示に従った作業が中心になりがちで、新しい技術に挑戦する機会が限られることも多い。これはプレイヤーとしても実感するところです。

キャリアの選択肢について

ここからは、業界の中で見てきた中で感じている、キャリアの考え方を3つ共有します。

1. スキルアップは「自分の時間」で積む

会社が研修を用意してくれる環境なら恵まれていますが、多くのSES企業ではそこまで手厚くないのが実情です。

私が一緒に仕事をしてきた中で単価が上がっていく人は、自分の時間で学んでいました。Qiita、Zenn、GitHubの3つを活用して自習するだけでも、エンジニアとしての市場価値は着実に上がります。

一方で、独学を続けるのは簡単ではないことも理解しています。その場合はオンラインスクールを活用するのも現実的な選択肢です。投資した分は、単価アップという形で回収できる可能性が高い領域ですから。

2. 上流工程へのシフト

要件定義やシステム設計といった上流工程に関われるようになると、単価は明確に変わります。これは単価交渉に関わっていて実感することです。

3. フリーランス・個人事業主という選択肢

フリーランスや個人事業主になれば、中間マージンを減らせるのは事実です。私自身、プレイヤーとして稼働しながら商流にも関わっているのは、この構造を理解した上での選択でもあります。

ただし、安易に独立を勧めるつもりはありません。発注側の立場も経験してきましたが、準備不足のまま独立した人材に苦労した経験があります。スキルだけでなく、コミュニケーション能力や自己管理能力も問われます。

昨今、大手企業ほどフリーランスエンジニアの受け入れには慎重です。独立を選ぶなら、相応の準備を持ってからのほうが、結果的にうまくいくと思います。

おわりに

SESの給料が上がりにくいのは、個人の努力不足ではなく、業界の構造的な問題が大きい。長くこの業界にいて、これは間違いないと感じています。

  • 時間単価 × 稼働時間という報酬ロジック
  • 多段階構造による粗利の分散
  • スキルアップと報酬のタイムラグ

この構造を理解した上で、自分のキャリアをどう組み立てるか。スキルアップでも、上流シフトでも、独立でも、選択肢を知っているだけで見える景色は変わります。

同じ業界で奮闘している方にとって、この記事が何かの参考になれば嬉しいです。

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